中古建物の耐用年数は何年?減価償却の計算方法ついて解説

Published On: 2024年04月02日Categories: 初心者向け
中古建物の耐用年数は何年?減価償却の計算方法ついて解説

不動産などの固定資産を取得する場合、減価償却について理解する必要があります。

減価償却とは、償却資産を取得した際の取得費用(購入費用)を一定の年数で割り、算出された額を毎年の経費として計上して会計処理することを指します。

特に中古の建物を事業用や投資商材として活用したり、建物を売却するときに、減価償却の会計処理に従って納税額を算出します。

最も、築年数が経過した中古物件を投資用商材として供している不動産投資家であれば、なおのこと減価償却の計算方法について知っておく必要があります。

今回は、不動産に設けられた耐用年数と減価償却の計算方法について解説して行きます。

中古住宅に設けられている耐用年数は何年?

耐用年数には、「物理的耐用年数」と「法定耐用年数」、「経済的残存耐用年数」の3種類があります。

耐用年数の種類 概要
物理的耐用年数 劣化が原因で建物が使えなくなる年数
法定耐用年数 減価償却資産が利用に耐えられる年数
経済的残存耐用年数 購入後、市場での不動産的価値がなくなるまでの年数

後述する「減価償却の計算」には、法定耐用年数を用いて算出していきます。

ここでは、建物の構造別で設けられている法定耐用年数と不動産の法定耐用年数の求め方について解説します。

建物構造別の法定耐用年数

不動産の耐用年数は、建物の構造を成している建材の種類と用途に応じて耐用年数が設定されています。

以下は事業用や投資用商材として活用している不動産に設けられた耐用年数です。

用途 物件構造 耐用年数
事務所用 木骨モルタル造のもの 22年
木造・合成樹脂造のもの 24年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの 50年
店舗用 木骨モルタル造のもの 20年
木造・合成樹脂造のもの 22年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの 39年
工場用・倉庫用 木骨モルタル造のもの 14年
木造・合成樹脂造のもの 15年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの 38年

中古住宅の耐用年数を求めるときは、上記表中の法定耐用年数と経過年数をもとに減価償却の計算を進めていきます。

非事業用不動産の耐用年数

居住目的で使用していた不動産を売却して利益を得れば、譲渡所得税の納税が必要になります。

納税額を求める時には、売却代金から取得費用と譲渡費用を差し引いて求めていきます

この時、式中の取得費は不動産の購入代金から減価償却費相当額を引いて求めるため、ここでも減価償却に対する理解が必要になります。

以下は、居住用不動産に設定されている法定耐用年数になります。

用途 物件構造 耐用年数
住宅用 木骨モルタル造のもの 20年
木造・合成樹脂造のもの 22年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの 47年

中古住宅の法定耐用年数の算出方法

前述したように、不動産に割り当てられている耐用年数は、構造を成す建材・用途に応じて設定されている年数が異なります。

例えば、事業用や投資用として活用している不動産を保有している場合、その不動産の取得にかかった費用を、減価償却を用いることで経費として計上できます。

また、中古住宅を事業用に変更する場合は、法的耐用年数ではなく、事業用として供した時以降の使用可能期間の見積もり年数で計算します。

また、使用可能年数の見積もりを立てるのが難しい場合は、以下の簡便法を用いることで算出できます。

適用状況 簡便法による耐用年数の算定方法
法定耐用年数の一部を経過した資産 (法定耐用年数 – 経過年数) + 経過年数 × 20/100
法定耐用年数の全部を経過した資産 法定耐用年数 × 20/100

例えば、法定耐用年数が20年の住宅用建物が建てられてから10年が経過した不動産の耐用年数を求めるときは、「法定耐用年数 – 経過年数) + 経過年数 × 20/100」を使用します。

この時の計算式は「(20年 – 10年) + 10年 × 20/100 = 18年」となります。

中古住宅を取引する際には、法定耐用年数を考慮して価格設定や減価償却の計算を行うことが重要です。

不動産投資で耐用年数を重視する理由

中古住宅を用いて不動産投資を行う場合、物件が持つ耐用年数を重視して物件を選んでいかなければ、運用そのものがうまくいきません。

ここでは、不動産投資で耐用年数を重視する理由について解説します。

金融機関の融資判断に影響するため

不動産投資を行う際、資金調達のためには金融機関からの融資を受けることが一般的です。

このとき、融資を受ける物件の耐用年数が非常に重要な要素となります。

金融機関はリスクを低減するため、物件の耐用年数を考慮して融資の判断を行います。

耐用年数が短い物件は価値が減少するスピードが速いと見なされるため、融資期間が短くなり、その結果、月々の返済額が大きくなる可能性があります。

したがって、物件の耐用年数を正確に把握し、将来のキャッシュフロー計画をしっかりと立てることが重要です。

減価償却に影響するため

不動産投資では、減価償却を利用して税負担を軽減することが一般的です。

減価償却とは、物件の価値が時間とともに減少していくことを考慮して、購入した物件の価値を毎年少しずつ経費として計上することを指します。

耐用年数が短いほど年間の減価償却額が大きくなり、その分税負担を軽減できます。

しかし、耐用年数が長いと減価償却額が少なくなるため、税負担の軽減効果が低くなります。

投資物件の選定時には、この減価償却の効果を考慮して耐用年数をチェックすることが重要です。

出口戦略に影響するため

不動産投資における出口戦略とは、投資物件を売却するタイミングや方法を事前に計画することです。

耐用年数は、物件の売却価格や将来の利用可能性に直接影響を与えます。

例えば、耐用年数が短い物件は、建替えやリノベーションの余地があるため、将来的に高値で売却することが可能です。

一方で、耐用年数が長い物件は、安定した賃貸収入を長期間にわたって得ることが可能ですが、売却時の価格が下がる傾向があります。

したがって、投資目的に合わせて適切な耐用年数の物件を選定することが、成功への鍵となります。

中古住宅の減価償却の求め方

ここでは、事業用として活用している中古住宅に設けられた減価償却の求め方について解説して行きます。

なお事業用として供した不動産の減価償却の求め方は、不動産の取得年月によって異なります。

例えば、平成19年4月1日以降に事業用不動産を取得した場合は、以下の計算式を使用して計算していきます。

計算式:減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率

賃貸収入を得ている場合の減価償却計算方法

ここでは、個人事業主として中古住宅を賃貸物件として利用し、賃貸収入を得る場合の減価償却計算方法について解説して行きます。

なお今回は、以下のような条件下で減価償却の計算を行います。

情報項目 不動産情報
物件種別 木造アパート
築年数 築25年
法定耐用年数 22年
貸付用 1,500万円
借方 1,500万円

今回シミュレーションする物件の築年数は25年と木造アパートの耐用年数は22年を超過しているので計算式「法定耐用年数×20/100」に当てはめて計算していきます。

22年(法定耐用年数)×20/100=4年(端数切捨て)

耐用年数が4年であることが判明し、この時の償却率が0.250というのが分かりました。

これらの数値を「減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率」に当てはめて計算すると以下のようになります。

1,500万円×0.250=375万円

このように、中古住宅を用いて賃貸収入を得るために利用する場合、取得時の仕訳と減価償却の計算を行います。

賃貸収入を得ることによって、減価償却を活用して経費を計上できます。

建物の大規模修繕を行ったときに発生する減価償却

中古住宅の建物に大規模修繕を行った場合、建物の耐用年数や減価償却率の計算方法が変わります。

例えば、大規模修繕にかかった費用が取得価額の50%以下で、かつ再取得価額(建物を新築した場合の価格)の50%以下である場合、以下の手順で耐用年数を求めます。

耐用年数=(資本的支出を含む建物の取得価額)÷{(資本的支出を含まない建物の取得価額/簡便法による耐用年数)+(資本的支出/法定耐用年数)}

なお、資本的支出が、再取得価額の50%よりも高い場合は法定耐用年数を使用します。

今回は、以下の条件下で規模修繕を行ったときに発生する減価償却を求めます。

情報項目 不動産情報
物件種別 木造アパート
築年数 築10年
法定耐用年数 22年
取得費 1,000万円
大規模修繕費 600万円
再取得価額 2,000万円

上記条件下は、大規模修繕にかかった費用が取得価額の50%以下で、かつ再取得価の50%以下であるため、「耐用年数=(資本的支出を含む建物の取得価額)÷{(資本的支出を含まない建物の取得価額/簡便法による耐用年数)+(資本的支出/法定耐用年数)}」を用いて計算していきます。

以下は、式中の「資本的支出を含む建物の取得価額」と「資本的支出を含まない建物の取得価額/簡便法による耐用年数」「資本的支出/法定耐用年数」の計算式になります。

求める式項目 計算式 数値
資本的支出を含む建物の取得価額 1,000万円+600万円 1,600万円
耐用年数 22年-10年+10年×0.2 14年
資本的支出を含まない建物の取得価額/簡便法による耐用年数 1,000万円/14年 71.4万円
資本的支出/法定耐用年数 600万円÷22年 27.2万円

上記で求めた数値を基の計算式に当てはめると、以下のようになります。

1,600万円÷(71.4円+27.2円)=16年(端数切捨て)

16年の定額法償却率は0.063なので、減価償却費は1,600万円×0.063=100.8万円となります。

マンションの耐用年数について

マンションの耐用年数は、減価償却の計算に使われる数字であり、建物の寿命そのものを表すものではありません。

実際には、適切な管理とメンテナンスが行われていれば、マンションは100年以上持続可能です。

国土交通省の資料によれば、鉄筋コンクリート造の建物の物理的寿命は117年と推定されています。

中古マンションを選ぶ際のポイント

投資商材となる中古物件を選んでいく中で、耐用年数は、長期的な収支計画だけじゃなく、金融機関からの融資判断や減価償却など、様々な要素に影響をもたらす中核的な要素です。

しかし耐用年数ばかりに気を取られ、肝心な物件選びで失敗してしまうと、せっかく立てた収支計画が意味を成しません。

ここでは、投資商材になる中古マンションを選ぶ時のポイントを紹介します。

適切に修繕が行われているかチェック

中古マンションを選ぶ際、その管理状態を把握することは極めて重要です。

特に、修繕積立金が適切に設定されているか、長期修繕計画がしっかりと立てられているかを確認する必要があります。

これらの要素は、マンションが過去にどのように管理されてきたかを示すバロメーターとなり、将来的な維持費や修繕費用を予測する際の大切な指標です。

適切な管理がなされていれば、長期にわたって物件の価値を維持することが可能となります。

空室状況もチェック

中古マンションの投資価値を評価する際には、空室率のチェックも欠かせません。

空室率が高いと、必要な修繕積立金が集まらず、建物のメンテナンスがおろそかになる可能性があります。

これは、長期的な視点で物件の価値を考える上で大きなリスクとなります。

また、空室率が低いマンションは、安定した賃料収入が期待できるため、投資としての魅力が高まります。

建物構造をチェック

マンションの建物構造にも注意を払いましょう。

特に、給水設備や配管の状態は重要なポイントです。

築年数が経過した物件の場合、これらの設備が老朽化している可能性があり、将来的な修繕費用がかさむ原因となります。

配管がコンクリートに埋められている場合、修繕作業が困難になることもあり、注意が必要です。

条件に合う物件は早めに申し込む

中古マンション市場は非常に競争が激しいため、条件に合った良い物件が見つかったら、迅速に行動することが重要です。

不動産ポータルサイトだけでなく、地元の不動産会社とも密接に連携し、未公開物件情報をいち早くキャッチする努力が求められます。

これにより、市場に出回る前に良い物件を確保することが可能となります。

築年数別の中古マンションの注意点

不動産投資を行って行く中で耐用年数は、長期的な収支計画を立てる時に使用する大事な要素です。

そのため、投資商材になる不動産を選ぶ時は、必ず耐用年数について確認を摂らなければ、収支計画に多大な影響をもたらします。

また減価償却費が、返済元金よりも大きいと早々に減価償却が完了してその後の資金繰り影響をもたらします。

ここでは、築5年、15年、25年別の中古マンションを投資商材にした時に気を付けることをそれぞれ解説して行きます。

築5年以下の中古マンションを活用した場合

築5年未満の中古マンションは、新築物件とほぼ変わらない状態であり、資産価値も高く保たれています

耐用年数は鉄筋コンクリート造で約43年、重量鉄骨造で30年とされており、この期間内であれば、銀行からの融資も長期間にわたって受けられる可能性が高いです。

減価償却費が毎年の借入返済元金を上回ることで資金繰りが楽になり、長期にわたって安定した賃貸経営が期待できます。

ただし、土地の購入価格を完全に借入で賄っている場合、所得税の還付を受けるためには注意が必要です。

築15年前後の中古マンションを活用した場合

築15年を経過した中古マンションは、設備の減価償却が終わり、資金繰りが厳しくなる可能性があります。

これは入居率の低下とも関連があり、物件の魅力を保つための修繕や更新が必要になる時期です。

この時期の物件購入を検討する際には、物件が市場に出された背景や、近隣の賃貸市場の動向を確認することが重要です。

利便性が高く、土地の価値がしっかりとしている場合は、短期的な売却益を狙う戦略も考えられます。

築25年以上の中古マンションを活用した場合

築25年を超えた中古マンションは、投資利回りが高く見積もられることが多いですが、空室リスクや修繕費の増加など、運用の難易度が高まります

耐用年数も短くなり、特に木造の物件の場合は融資を受けることが困難です。

このような物件を選ぶ際には、土地の価値を重視し、建て替えを視野に入れた投資戦略を検討することが重要です。

土地の属性が優れていれば、短期的な売却益を目指すことも一つの選択肢となります。

中古住宅で不動産投資を行うときは耐用年数を確認してから行うこと

不動産投資において耐用年数は非常に重要な要素です。

耐用年数は物件の価値を評価する基準となり、減価償却費の計算や融資の返済期間の設定に影響を与えます。

中古住宅を購入する際には、その物件の築年数と耐用年数を確認し、将来のメンテナンス費用や修繕費用も考慮に入れて投資計画を立てる必要があります。

物件の耐用年数が長いほど、減価償却費を長期間にわたって計上することができ、毎年の税負担を軽減することが可能です。

しかし、物件の劣化や老朽化が進むとメンテナンス費用が増加し、収益性が低下するリスクもあります。

そのため、耐用年数だけでなく、物件の状態や立地、将来の市場価値も考慮に入れて投資判断を下すことが重要です。

また、投資計画を立てる際には、将来の市場動向や利回り、物件の維持管理費用など、多岐にわたる要素を考慮しましょう。

耐用年数を確認し、物件の状態や立地条件を総合的に評価することで、リスクを最小限に抑えつつ、効果的な不動産投資が行えます。