不動産投資を始めるなら現金とローン利用のどっちがいい?メリット・デメリットや判断ポイントについて解説
不動産投資を始めるために必要な不動産を用意する方法は、現金一括払いとローン払いのいずれかを利用して物件を用意します。
そもそも不動産自体、決して安い買い物ではないので、物件を慎重に選んだうえでいずれかの支払い方法を用いて購入に至ります。
実際、どちらの支払い方法に優劣はなく、どちらの方法を選ぶかは不動産投資の運用方法や収益性などの違いに合わせて選ぶのが無難です。
今回は、それぞれの支払い方法が持つメリット・デメリットの解説に加えて、各支払方法が適している場面・状況について解説します。
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現金払いで不動産投資を始めるメリット
不動産の購入価格は、物件の規模や状態、エリア需要等、様々な要素が複雑に絡み合った結果であるため、同じ間取りの物件でも同額で販売されていることはありません。
また、冒頭でも触れたように、決して安い買い物でもないので、現金で物件を購入する際は、慎重に投資用不動産を選んでいく必要があります。
またローン利用とは違い、現金払いで不動産購入をすれば、以下のようなメリットが得られます。
- 不動産購入にかかる手数料がないため購入総額や安く済む
- ローン利用が難しい物件でも投資用不動産として購入できる
- ローンが組みにくい属性の方でも不動産投資が始められる
- 毎月のローン返済がない
- 担保設定が不要
- 購入手続きがスムーズに済む
ここからは、上記5つのメリットについて解説します。
不動産購入にかかる手数料がないため購入総額や安く済む
現金払いでの不動産投資では、多くのローンに関連する手数料や取引手数料を節約できます。
現金払いなら、ローンを利用したときに発生するローンの事務手数料や審査手数料、さらに金利や長期にわたる返済計画に基づく利息も発生しません。
これらの費用を避けることで、購入する不動産の総コストが大幅に削減され、投資の収益性が向上します。
ローン利用が難しい物件でも投資用不動産として購入できる
現金での取引は、ローンの審査を受けることなく取引が可能です。
そのため、伝統的な金融機関がローン審査で難色を示すような古い建物や特殊な用途で活用する不動産の購入が容易に行えます。
これにより、他の投資家が敬遠するようなニッチな市場でもチャンスを掴むことができます。
ローンが組みにくい属性の方でも不動産投資が始められる
自営業者やフリーランス、外国籍の方など、一般的にはローンの審査が厳しいとされる属性の方でも、現金を持っていれば不動産投資を始められます。
これにより、資産の多様性を持つことができ、収益の安定性やリスクの分散にも繋がります。
毎月のローン返済がない
現金での不動産購入の最大のメリットは、毎月のローン返済の必要がないことです。
これにより、物件の家賃収入は全て純利益として計上できます。
また、経済的な変動や収入の減少時でも、ローン返済のプレッシャーに悩まされることなく、安定した運用が可能になります。
担保設定が不要
現金払いでの不動産投資の大きなメリットは、物件を担保として設定する必要がないことです。
ローンを組む場合、金融機関は貸し付ける資金の安全を確保するために物件を担保にするのが一般的です。
しかし、担保設定にはさまざまな手続きや費用が伴います。
一方、現金での取引では、これらの煩雑なプロセスやコストを回避することができます。
更に、担保として物件を差し押さえられるリスクがないため、投資家としての資産の自由度が増します。
この自由度の高さは、将来的に物件の売却や再利用など、多岐にわたる選択肢を考慮する際に非常に役立ちます。
購入手続きがスムーズに済む
現金払いのもう一つの明確な利点は、購入手続きがスムーズに進むことです。
ローンを利用する場合、金融機関との交渉や審査、契約締結といった多くのステップを経なければなりません。
これらのプロセスには時間がかかるだけでなく、審査が通らないリスクも伴います。
しかし、現金での取引ではこれらのプロセスが不要となります。
これにより、物件の購入スピードが大幅に向上し、良い物件が見つかれば誰よりも早く購入手続きに進めます。
また、売主との交渉もスムーズに行えるため、好条件での取引が期待できることも大きな魅力と言えるでしょう。
ローン利用で不動産投資を始めるメリット
現金一括払いで投資用不動産を購入する場合、多額の購入資金を用意しておく必要があります。
しかし、ローンを活用して投資用不動産を購入した場合、現金払いでは得られない4つのメリットが得られます。
- レバレッジ効果が得られやすい
- 団体信用生命保険に加入できる
- 多額の購入資金を用意する必要がない
- キャッシュフローが大きい
ここからは、上記4つのメリットについて解説します。
レバレッジ効果が得られやすい
ローンを利用して不動産投資を行う最大のメリットは、レバレッジ効果が得られることです。
レバレッジ効果とは、少額の自己資金で大きな投資を行い、その結果として得られる収益の増大を指します。
具体的には、1000万円の物件を全額自己資金で購入するのではなく、200万円の自己資金と800万円のローンで購入することで、同じ200万円の自己資金で5件の物件が購入できます。
物件価格の上昇や家賃収入により、全体の収益率が自己資金だけでの投資に比べて格段に高くなる可能性があります。
団体信用生命保険に加入できる
多くの金融機関では、不動産ローンの取り扱いに伴い、団体信用生命保険に加入することを条件にしています。
この保険は、万が一の事態でローンの返済ができなくなった場合に、残存するローン残高を補填してくれるものです。
これにより、家族や相続人への負担が軽減されるため、投資家のリスクヘッジとして非常に有効です。
また、保険料はローンと一緒に支払う形になるので、毎月の手続きが簡略化されるメリットもあります。
多額の購入資金を用意する必要がない
ローンを利用することで、物件購入に必要な資金を用意する必要がなくなります。
これにより、投資家は多額のキャッシュを保持することなく、不動産市場に参入できます。
特に、価格の高い都市部などでの投資を考えている場合、ローンの活用はほぼ必須と言えるでしょう。
資金調達の柔軟性が増すことで、良い物件が見つかった際の行動スピードも上がります。
キャッシュフローが大きい
ローンを利用することで、初期の自己資金投下額を抑えられるため、他の投資機会に活用できる資金が増えます。
これにより、複数の物件を同時に取得するなど、多角的な投資を行うことが可能となり、結果的に全体のキャッシュフローが増加する可能性があります。
例えば、家賃収入がローン返済額を上回る場合、その差額は純利益として確保できます。
これが複数の物件で継続して得られれば、大きなキャッシュフローの源泉となるでしょう。
現金払いで不動産投資を始めるデメリット
現金払いで投資用不動産を購入すれば、毎月一定額のローンの返済がないだけじゃなく、ローン審査の通過が難しい属性の方でも不動産投資が始められるなどのメリットがあります。
しかし、現金払いで投資用不動産を購入すれば、以下のようなデメリットが不動産を購入した時点で降りかかります。
- 自己資金が減る
- レバレッジ効果が得られない
- 投資資金の全額回収に時間がかかる
ここでは、現金払いが抱えているデメリットを3つ紹介します。
自己資金が減る
現金払いでの不動産投資は、今まで貯めてきた自己資金を一度に使用して不動産を自分のものにします。
これは、購入後の緊急のニーズや他の投資機会が生じた際に手元の流動資金が不足するリスクを持ちます。
例えば、緊急の物件の修繕が必要になった場合や、突然の経済的な困難に対応するためのバッファがなくなり、金融的な柔軟性を失う可能性があります。
また、他の有望な投資機会が現れたときに迅速に行動する余地が狭まることも考えられます。
現金払い最大のデメリットともいえるため、あらゆる事情に対応できるようある程度の貯金を別口で用意しておくのがいいでしょう。
レバレッジ効果が得られない
レバレッジ効果は、少ない資金で大きな投資を行い、それによる収益の増加を狙う戦略です。
ローンを使用すると、自己資金の一部で複数の物件を所有することが可能となり、物件の価格上昇や家賃収入からのリターンが大きくなる可能性があります。
しかし、現金払いでの投資では、この効果を享受できません。
一つの物件に多くの資金を投じることになるため、そのリターンは限られる可能性が高くなります。
投資資金の全額回収に時間がかかる
現金で不動産を購入すると、その投資資金の回収に長い時間がかかることが考えられます。
ローンを使用した場合は、家賃収入をローン返済に充てながらも、ある程度のキャッシュフローが維持できます。
しかし、現金払いの場合、家賃収入は全額が利益として計上されますが、初期の投資額を回収するまでの期間が長いです。
特に、高額な物件を購入した場合や、家賃収入が期待ほど高くない場合、資金回収までの期間がさらに長引くでしょう。
ローン利用で不動産投資を始めるデメリット
ローンを活用して投資用物件を購入すれば、手持ち資金以上の金額で不動産投資が始められたり、小さな資金で大きな投資収益が得られるレバレッジ効果にも期待ができます。
とはいえ、ローン払いにも現金払い同様にデメリットが存在します。
- 金利・事務手続きなどの負担が大きい
- 融資を受けるまでに約4週間もの時間がかかる
- 購入した不動産に担保設定を設ける必要がある
- 収入の一部がローン返済に使われる
- 通常の住宅ローンよりも金利が高い
ここからは、上記5つのデメリットについて1つずつ解説して行きます。
金利・事務手続きなどの負担が大きい
それぞれの支払い方法で負担する額の大きさを見た時、ローン払いで不動産を購入した時にかかる負担が大きいです。
負担が大きい理由は、金利や事務手数料などの諸費用が発生しているためです。
以下は、ローンを組んだときに負担する諸経費です。
- 事務手数料
- 登録免許税
- 保証料
- 司法書士への報酬
例えば、金利は、長い返済期間にわたり、投資家にとってのコストとして積み重なるものとなります。
加えて、ローン契約を結ぶ際の事務手続きも複雑で、多くの書類の提出や審査を経る必要があります。
これらの手続きは時間と労力を要し、特に初めてのローン利用の際にはその負担を強く感じるでしょう。
融資を受けるまでに約4週間もの時間がかかる
不動産投資ローンの審査・承認プロセスは、通常の消費者ローンに比べて時間がかかります。
これは、銀行や金融機関が投資物件や借り手の信用状況を詳しく検討する必要があるためです。
このため、良い物件を見つけた際にもすぐに購入することが難しく、物件を確保するための競争が激しい場合は、ローン審査の遅さがネックとなることも考えられます。
購入した不動産に担保設定を設ける必要がある
ローンで不動産を購入する場合、その物件は金融機関の担保として設定されます。
これは、ローン返済が滞った場合に、金融機関が物件を差し押さえて売却し、ローン残高を回収するための手段となるからです。
この担保設定があると、将来的にその物件の売却や再融資などの取引を行う際に制約が出ることもあります。
収入の一部がローン返済に使われる
ローンを組むと、得られる家賃収入の一部はローン返済に充てられます。
特に初期の返済額が高い場合や金利が高いと、収入と返済額のバランスが悪化し、キャッシュフローが厳しくなるリスクがあります。
適切な計画なしにローンを組むと、返済の負担が大きくなり、投資家の金融的な健全性を損なう恐れがあります。
通常の住宅ローンよりも金利が高い
投資用不動産のローンは、通常の住宅ローンと比べて金利が高く設定されることが一般的です。
これは、投資用不動産がビジネスの一環であり、そのリスクが高いと金融機関が判断するためです。
高い金利が長期間続くと、そのコストは非常に大きくなります。
したがって、ローンを組む際は、金利や返済条件をよく確認し、最も条件の良い金融機関を選ぶことが重要です。
現金払いで不動産投資を始めるのが向いているケース
現金払いで投資用不動産の購入を検討している方は、物件購入以前と変わらない生活状況を維持できるだけの余力があることを前提に進める必要があります。
具体的には、物件の購入費用や諸経費に加えて、3~6ヶ月前後の生活費を確保している状態が望ましいです。
それらを踏まえてうえで、ここでは、現金払いで不動産投資を始めるのが向いている方の特徴と状況について解説します。
自己資金にある程度の余裕がある方
自己資金の豊富な投資家は、不動産を現金払いで購入することで、ローン利用時の金利や手数料の負担を回避できます。
また、資産の多様化を図りながらも、資金の流動性を一定以上維持することができるため、投資の自由度が高まります。
現金払いは、特に中長期の投資戦略を持つ方や、安定したキャッシュフローを重視する方にとって魅力的な選択となり得ます。
融資が受けられない物件を購入したいとき
一部の特殊な物件や、状態が良くない物件、エリア的にローンが組みにくい物件など、銀行の融資審査で不利となる物件も存在します。
現金購入の場合、これらの物件も選択肢として考慮できるため、より幅広い投資チャンスを追求できます。
このような物件は、他の投資家から見過ごされがちであるため、独自の価値を見いだすこともできます。
物件購入を手早く済ませたいとき
物件購入の際、融資を利用すると、審査や契約の手続きに時間がかかります。
一方、現金払いの場合は、これらの手続きをスキップし、購入手続きをスムーズに済ませられます。
特に、競合が激しいエリアや、急な売り出しに即応したい場合、現金での購入は大きなアドバンテージとなります。
相続税対策として不動産を購入したいとき
相続税対策の一環として、不動産の購入を検討するケースも考えられます。
現金での購入は、ローンの返済負担を気にせず、資産の配分や運用を計画することができます。
特に、相続対策の観点から中長期的な運用を考える場合、現金購入による安定したキャッシュフローが有利になります。
ローン審査が通りにくい属性の方
自営業者やフリーランス、短期間の雇用契約など、銀行のローン審査で不利とされる属性を持つ方もいます。
このような背景を持つ投資家は、現金払いでの不動産投資を選択することで、物件購入のハードルを下げられます。
また、一度投資物件を現金で購入し、それが安定したキャッシュフローを生み出すようになれば、次回のローン取得時に有利な条件での融資を受けられる可能性もあります。
ローン払いで不動産投資を始めるのが向いているケース
現金払いで不動産投資を始めるために遵守したい条件が満たせない方は、ローン払いを活用して投資用物件を用意するのがいいでしょう。
ここでは、ローン払いで不動産投資を始めるのが向いている方や状況について解説します。
レバレッジ効果を活用して少ない資金でお金を増やしたいとき
レバレッジ効果は、借入金を活用して投資を行うことで、元の資本よりも大きな収益を目指すことができる効果を指します。
不動産投資においてローンを利用することで、少ない自己資金でも利回りに期待ができる物件が購入できます。
物件価格の上昇や賃料収入による収益が、ローンの利息負担を上回る場合、実質的なリターンが大きくなる可能性があります。
この方法での投資は、資金効率を高めることができるため、限られた資金を有効に活用したい投資家に適しています。
生命保険の代わりに団体信用生命保険を活用したいとき
不動産投資ローンを組む際、団体信用生命保険に加入することが一般的です。
この保険は、投資家が亡くなった場合や一定の障害を負った場合に、ローンの残債を補填する役割を果たします。
一般的な生命保険と比較して、保険料が安価であることが多く、また特定のリスクに特化しているため、効率的なリスクヘッジが可能です。
生命保険を検討しているが、まだ加入していない方や、低コストでのリスクヘッジを望む方に向いています。
手元に余剰資金がないとき
不動産投資には大きな資金が必要とされることが多いですが、ローンを利用することで、少ない初期投資で物件が手に入ります。
初期のダウンペイメントや諸経費を用意すれば、残りの物件価格分をローンで賄うことができます。
これにより、手元の余剰資金が少ない状態でも、不動産投資を始められます。
また、物件からの収益(賃料収入など)をローン返済に充てることで、資金繰りを安定させることもできます。
手元資金が限られているが、投資を始めたいと考えている方におすすめの方法です。
現金・ローンを用いて不動産投資を始めるか投資家の経済状況や目的に合わせて使い分けることが大切
不動産投資は多くの魅力を持つ投資手段でありながら、適切な方法で資金調達を行うことがその成功の鍵となります。
現金での取引とローンを活用した取引、両方にはそれぞれのメリットとデメリットが存在します。
現金での投資は、迅速な取引や融資の必要がない反面、資金の回収に時間がかかる可能性があります。
一方、ローンを利用することで、レバレッジ効果を最大限に活用して収益を増やすチャンスが生まれるものの、金利負担や返済義務といったリスクも伴います。
それぞれの方法には適切なタイミングや状況があるため、投資家の経済状況や投資目的をしっかりと理解し、最も適した方法を選択することが重要です。
結果として、資金調達の方法の使い分けは、不動産投資の成功を左右する大きな要因となり得ます。