不動産賃貸業は法人化したほうが良い?事業の始め方と注意点も併せて解説
不動産賃貸業とは、簡単に言うと物件の大家さんになって運用をしていくことを指します。
不動産賃貸業を行うことで、毎月安定した家賃収入を得ることができ、効率の良い資産運用が可能となります。
不動産賃貸業は個人として行うこともありますが、法人化をして運用するケースも多々あります。
法人化は節税などのメリットも多いため、ぜひ検討したいポイントです。
ここからは、不動産賃貸業の内容や始め方・注意点など事前に抑えておきたいポイントを解説します。
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法人化して賃貸業を行うと何が変わる?
不動産賃貸業は、最初のうちは個人事業主として運用していき、規模が大きくなったら法人化するケースが多いです。
個人事業主として運用する場合と会社を設立して運用する場合では、不動産賃貸で得た収益に課される税金に違いがあります。
- 個人事業主:所得税・住民税
- 法人:法人税・事業税及び住民税
法人に適用される税率は、個人事業主の税率と比較して収益が増えるほどお得になります。
家賃収入が年間900万円を超える場合は、法人化した方が、課税額が低くなるのでおすすめです。
課税対象となる所得金額 | 法人実効税率 |
---|---|
400万円未満 | 25.89% |
400万円超800万円未満 | 27.57% |
800万円超 | 33.80% |
その他にも、法人化には個人事業主と比較して以下のようなメリットがあります。
- 融資の審査に通過しやすくなる
- 資金調達の幅が広がる
- 最大10年間の繰越損失が可能
- 12月以外でも任意で決算月を設定できる
不動産賃貸業を始めるメリット
専門的な資格がいらない
不動産賃貸業は、始めるのに資格が必要ありません。
宅地建物取引士(宅建)の資格も必要なく、資金が十分にあればすぐに始めることができます。
ただし、不動産の知識がなければ上手くいかないことが多いため、最低限の知識はしっかり学んでいくことをおすすめします。
上手くいくと収入が安定しやすい
不動産賃貸業の良いところは、家賃収入によって収益が安定しやすい点です。
部屋さえ埋まっていれば、毎月決まった賃料を得られるので、資金計画も立てやすいです。
他の投資と比較して景気の変化によって利益が増減することが少ないのも魅力です。
ただし、築年数の経過によって収益性は原則下がっていくので、注意が必要です。
金融機関から融資が受けられる
不動産賃貸業は、金融機関からの融資が受けられます。
他の投資では、個人が金融機関から投資資金目的の融資を受けることは原則できません。
しかし、不動産賃貸業であれば事業扱いとなるので、金融機関から不動産投資ローンを借りて資金を調達することが可能です。
ローンを活用することで、レバレッジを効かせた投資が実現できます。
不動産賃貸業は長期運用なら法人化する方がお得
個人 | 法人 | |
---|---|---|
事業の拡大 | ややしにくい | しやすい |
融資 | 受けにくい | 相対的に受けやすい |
節税 | ややしにくい | しやすい(経費の幅が広い) |
費用・手間 | 安い・少ない | 相対的に高い・多い |
不動産賃貸業は個人事業主としておこなうか、法人化しておこなうかの選択肢があります。
大きな違いは前述したように税金の違いですが、長期で稼ぐのであれば法人化して始める方がお得です。
法人化することで規模が大きくなった際に税金が優遇されるだけではなく、経費計上できる費用の幅も広いためです。
反対に、長期的に不動産を運用する気がないのであれば、個人事業主として運用した方がお得です。
不動産賃貸業の始め方
不動産賃貸業を初心者の人が始める際は、次のような流れで行います。
- 不動産投資について学ぶ
- 投資先を選定する
- 投資先候補の内覧
- 金融機関へローン申し込み
- 物件の引き渡し
以下にそれぞれのステップを解説します。
不動産投資について学ぶ
不動産投資を始める前に、ある程度の知識は勉強しておきましょう。
一般的に情報収集の手段としては、本やセミナーが挙げられます。
また現在はYouTubeで動画を出していることも多いので、初心者向け動画を見るのもよいでしょう。
投資先を選定する
不動産投資についての知識をつけた後は、投資用の不動産を選定します。
主に判断するべきは、次の要素です。
- 物件の種類(戸建てorアパート)
- 物件の地域
- 新築か中古か
例えば地方の物件は価格が安い代わりに数十年後に人口が減っているリスクがあるなど、それぞれの要素にメリットとデメリットがあります。
どの物件も一長一短で、非の打ちどころがない物件というのはほとんどありません。
そのため、自身が何を大切にしたいか、どこを目標にするかを考える必要があります。
投資先候補の内覧
物件候補を更に絞りこむために、実際に物件を訪れて、内部や周辺環境のチェックを行います。
内覧する前には、不動産会社に投資用物件を探していることや自分の投資対象などを説明しておくと、内覧時にもスムーズに説明してもらえます。
内覧する際には、玄関や居室、水回りなどを丁寧に確認していきましょう。
遠方の物件を購入するケースもありますが、その場合でも一度は現地に赴いて自分の目で確認することをおすすめします。
金融機関へローン申し込み
物件が決まれば、金融機関へローン申し込みを行います。
ローンの申し込みは事前審査と本審査の二回があり、事前審査に通らないと売買契約も結べません。
気になる物件が見つかったら、できるだけ早めに事前審査は通しておきましょう。
住宅ローンの事前審査を受ける際は、次の提出書類が必要なので準備しておくとスムーズに進めます。
- 源泉徴収票
- 全借入の返済予定表
- 身分証明書
- 購入物件の収益
- 保有不動産の評価額
事前審査には1~2週間程度、本審査では2週間~1か月程度かかるので、これから不動産賃貸業を始める人は始める時期を計算しておきましょう。
物件の引き渡し
住宅ローンの審査に通って売買契約を締結すれば、契約完了です。
買い手が見つかれば、不動産会社の立ち合いの元、物件の引き渡しを行います。
物件の状態を確認して問題がなければ、登記手続きや融資の実行をして、引き渡しが完了します。
物件を購入したら、本格的に入居者の募集を開始していきます。
不動産賃貸業を始める際の注意点
賃貸業には時間・手間がかかる
賃貸業を一定以上の規模で行おうと思ったら、結構な労力と手間がかかってきます。
業務を委託せずに自分ひとりで運営する場合、フルタイムに近い状態での対応が必要になる可能性もあります。
簡単な副業だと思って始めると、他の用事に手が回らなくなってしまうこともあるので注意が必要です。
事前にどれくらいの時間と手間がかかるかを把握しておき、外部へ委託するなどの選択肢も考慮しておきましょう。
空室リスクを考慮する
マンション・アパートの賃貸運営では、部屋が常に満室になる保証はありません。
特に、下記のような状況である場合は、空室のリスクが高まってしまいます。
- エリア内の人口が減少した
- エリア内で物件の供給過多が起こっている
- 苦情・クレームや物件の欠陥が改善されていない
空室リスクは、事前の物件やエリアの調査、運用する中で発生する問題の改善をいかにおこなっているかで変わってきます。
初心者は空室リスクを回避するために、以下の行動を実施していきましょう。
- エリア・物件選びを賃貸管理会社に相談する
- 連絡・相談を管理会社と頻繁に行う
- 何かあればすぐに管理会社へ連絡をする
不動産賃貸業を始めるなら大変な面も知っておこう
不動産賃貸業を始める際には、その魅力だけでなく、直面する可能性のある困難についても理解しておくことが重要です。
確かに、不動産賃貸業は高い収益性と資産価値の増加が期待できる投資手段ですが、それには多くの労力、時間、そして金銭的コミットメントが伴います。
最初の大きなハードルは、物件の購入に関わる融資の返済です。
多くの場合、賃貸用不動産を購入するためにはローンを組む必要があり、定期的な返済が発生します。
市場が不安定で入居者が見つからない期間があれば、これが重大な負担となり得ます。
さらに、不動産の管理業務は時間と労力を要する作業であり、入居者からのクレーム対応、定期的なメンテナンス、修繕作業、賃貸契約の更新など、絶え間なく注意を払う必要があります。
また、賃貸物件の所有者としては、法律や規制の変更にも常に注意を払い、適切に対応する必要があります。
これには、建物の安全基準の維持や入居者の権利を守るための法的義務が含まれます。
不動産市場の変動にも敏感でなければならず、市場の動向を把握し続けることで、投資の成功率を高めることができます。