軽量鉄骨造の耐用年数は何年?減価償却率と計算方法・知っておきたいデメリット
建物の構造の一つである軽量鉄骨造。
木造建築と比較して倒壊リスクが低く建築コストも安いので、不動産投資の初心者からも人気があります。
ただし、最もおすすめされるRC造と比較すると耐用年数が比較的短く、運用戦略も変わってくることが多いです。
ここからは、軽量鉄骨造の耐久性と、運用する上で知っておきたい注意点について解説していきます。
軽量鉄骨造とは?
軽量鉄骨造とは、厚さ6ミリ未満の鋼材を使用した構造で、Steelの頭文字を取って「S造」と表現されることもあります。
同じS造には重量鉄骨造と呼ばれるものがありますが、こちらは厚さ6ミリ以上の鋼材を使用している構造です。
軽量鉄骨造の場合の工法はプレハブ工法という、建築物の一部や全てのパーツを工場で製造してから運び、現地で組み立てる方式となります。
組み立て式なので技術の差が生まれづらいメリットがあるので、把握しておきましょう。
軽量鉄骨造の耐用年数
軽量鉄骨造に限らず、建物には国税庁が定める法定耐用年数が設定されています。
期間中は建物が劣化するため、法律上の価値が減少していくとみなされます。
軽量鉄骨造の耐用年数は、骨格材の厚みに応じて変わり、骨格材肉厚が3㎜以下の場合は19年間、3㎜以上4㎜未満の場合は27年間とされています。
また骨格材肉厚の厚さが4㎜以上の場合は重量鉄骨造となり、耐用年数は34年となります。
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法定耐用年数=耐久年数ではない
法定耐用年数は耐久年数ではなく、あくまで税法上の規定です。
そのため法定耐用年数が過ぎたからと言って、その家に住めなくなるわけではなく、日々のメンテナンスなどによって使用できる期間は変わります。
例えば、外壁材は直射日光や風雨の影響で劣化していきますが、外壁塗装工事などを行えば寿命を引き延ばせます。
よって法定耐用年数は、あくまで税法上の規定として定められているものと理解しておきましょう。
減価償却費の計算方法
軽量鉄骨造に関わらず、価値がどのくらい下がるのか(減価償却費)を計算する方法は次の計算式で算出できます。
・減価償却費=建物金額÷耐用年数(減価償却期間)
また、建物の減価償却費を算出するには、耐用年数に応じた償却率を次のように用いれば算出可能です。
・減価償却費=建物金額×耐用年数に応じた償却率
例えば軽量鉄骨造において、耐用年数19年の場合の償却率は0.053と定められているので、建物の金額と合わせれば減価償却費は計算できます。
減価償却費を綿密に計算したい場合は、耐用年数に応じた償却率を調べて計算しましょう。
軽量鉄骨造の特徴
軽量鉄骨造は近年人気がありますが、以下のような特徴が挙げられます。
- プレハブ工法で作られる
- 倒壊リスクが低い
- 建築コストと家賃が高い
軽量鉄骨造は地震などの災害リスクにも強いため、災害の心配をしている人にもおすすめの構造です。
以下にそれぞれの特徴を解説します。
プレハブ工法で作られる
軽量鉄骨造の住宅は、全てプレハブ工法で作られます。
例えば、プレキャストコンクリートと呼ばれるコンクリートの壁などを工場で製作し、現場まで運搬・設置・組み立てをします。
工場で作られる型枠は天候に左右されることがないので、何度も使用することが可能です。
コンクリート建築では広く取り入れられている工法ですが、技術が安定しやすい特徴もあるのでデメリットは少ないです。
倒壊リスクが低い
軽量鉄骨造の耐震性は、木造以上重量鉄骨造以下なので、地震による災害被害を抑えやすくなっています。
鉄骨は折れにくい特性があるので、地面から伝わるエネルギーが大きかったとしても倒壊リスク自体はそれほど高くありません。
重量鉄骨造に比べると倒壊リスクは高いですが、価格的にも抑えることができるのでお勧めです。
ただし、軽量鉄骨造の耐震性は地震の規模によっては大きく被害を受ける可能性もあるので気をつけましょう。
建築コストと家賃が低い
軽量鉄骨造の建物に使われるプレハブ工法は、事前に主要部品を生産してから持ち運んで完成させる方式です。
そのため現場で作業する時間が短縮できるので、工期が短くなり建築コストが抑えられます。
また材料費も大量生産品の一つとして使える可能性が高いので、費用削減が可能です。
賃貸物件のオーナーとしても投資額が低くなるので、家賃を安く設定できるメリットもあります。
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軽量鉄骨造の注意点
軽量鉄骨造を建築しようと決めている人もいるかもしれませんが、軽量鉄骨造で建築された物件には次のようなデメリットがあります。
- 通気性が悪い
- 間取りが制限される
- 防音性が劣る
木造住宅よりも耐久性が高いメリットがある代わりに、上記のような注意点もあるのできをつけましょう。
以下にそれぞれの注意点を解説します。
通気性が悪い
軽量鉄骨造は、木造住宅と比較すると通気性や断熱性が悪いです。
空気が滞りやすくなっているため、夏は暑く、冬は寒くなりがちです。
建築する際には通気性が良い間取りにするなどの工夫をする必要があります。
また断熱性を確保するためには、高い材料を使用するなどの対処法があります。
間取りが制限される
軽量鉄骨造は、建築の際に壁に筋交いを入れて強化することがあります。
強度を補強するための対策ですが、部屋の間取りを工夫しづらくなるデメリットがあります。
将来的にアレンジをしづらくなるので、設計時点で間取りを途中で変更することができなくなります。
間取りを自由に設計したいのであれば、筋交いを入れないか、そもそも軽量鉄骨造にしない選択肢を取るといいです。
防音性が劣る
軽量鉄骨造は鉄筋コンクリート造の建物に比べると防音性が低くなります。
隣の家の生活音が聞こえるケースや、近所の音が響きやすくなるのでストレスに感じる人もいるでしょう。
反対に自分の生活音が周りに聞こえやすくもなるので、騒音問題として問題視されることもあります。
騒音問題が気になる人は、鉄筋コンクリート造を選びましょう。
軽量鉄骨造の耐用年数と計算方法を知っておこう
軽量鉄骨造は木造よりも耐久性が高く、重量鉄骨造よりも安く建築できるメリットがあります。
減価償却費は「建物金額×耐用年数に応じた償却率」で計算できるので、気になる人は償却率を調べて計算しましょう。
デメリットとして計算して通気性や防音性が他の構造と比べて劣ることがあるので、理解したうえで建築するか決めるとよいでしょう。